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『Pavillon de Paris 1976』(Mayflower) |
『Pavillon de Paris 1976』(MF-64/65/66) 2CD+1DVD
June.6 1976 Les Abattoirs,Paris,France
Mono Soundboard Recording Quality:Excellent
(※)Disc-2 Track 7-16 June.4,5,7 1976 Les Abattoirs,Paris,France
Disc-2 Track 7,8,9,10,11 Stereo Audience Recording Quality:Excellent
Disc-2 Track 12,13,14,15,16 Stereo Soundboard Recording Quality:Excellent-Very Good
(Disc-1) 1.Introduction/2.Honky Tonk Women/3.If You Can't Rock Me/4.Get Off Of My Cloud/5.Hand Of Fate/6.Hey Negrita/7.Ain't Too Proud To Beg/8.Fool To Cry/9.Hot Stuff/10.Star Star/11.Angie/12.You Gotta Move/13.You Can't Always Get What You Want/14.Band Introductions/15.Happy/16.Tumbling Dice/17.Nothing From Nothing/18.Outa Space (Disc-2) 1.Midnight Rambler/2.It's Only Rock'n Roll/3.Brown Sugar/4.Jumping Jack Flash/5.Street Fighting Man/6.Outro/7.Angie(6/4)/8.Introduction(6/5)/9.Honky Tonk Women(6/5)/10.Ain't Too Proud To Beg(6/5)/11.Fool To Cry(6/7)/12.Hot Stuff(6/7)/13.Tumbling Dice(6/7)/14.Outa Space(6/7)/15.Midnight Rambler(6/7)/16.Cherry Oh Baby(6/7)
本作がメインで収録しているのは、1976年6月6日パリ公演のテレビ放送用のワーキングビデオの音声。
裏ジャケットにこの音源の代表盤であるDAC『French Made』(DAC-009)のジャケットがデザインされていることから、DAC盤を基にしたのかと思いきや、"Ain't Too Proud To Beg"最初のサビの編集がDAC盤独自のものではなく、従来タイトル同様のものとなっていることから、DAC盤のコピーではありません。
ここで、その"Ain't Too Proud To Beg"最初のサビの編集について触れておくと、この最初のサビは本来どうだったのかとというと、この公演のオーディエンス音源収録盤であるTaranturaの『Live 666』(TCDRS-7-1,2)で確認が可能。
この曲のサビは同じヴァースを2回繰り返す構成になっていることから便宜上1回目2回目と分けますが、最初のサビは以下になっています。
(1回目) Ain't too proud to beg, sweet darlin'. Please don't leave (ハウリング)me, don't you go. (2回目) Ain't too proud to beg, sweet darlin'. Please don't leave me, don't you go.
ビデオ映像の方の音声は基本的にどういう編集になっているかというと、サビの2回目部分は2番のサビの同じ部分を補填していて、以下のようになっています。
(1回目) Ain't too proud to beg, sweet darlin'. Please don't leave (ハウリング)me, don't you go. (2回目) Ain't too proud to beg, (ハウリング)sweet darlin'. Please don't leave me, don't you go.
何故にわざわざハウリング部分を増殖させているのか理解に苦しむところ。この編集は、事典でDAC盤と並んでもう1つの代表盤として挙げたGodfatherの『Les Loups Dans L'Abattoir The Complete 1976 Paris Tapes』(G.R.Box 20)やVGP『French Made 1976』(VGP-258)、Speedball『Les Abattoirs Paris 76』(SBC002-2)等々、DAC盤以外のタイトルで聞くことが出来ます。
では、独自編集のDAC『French Made』はというと、
(1回目) Ain't too proud to beg, sweet darlin'. Please don't leave me, don't you go. (2回目) Ain't too proud to beg, sweet darlin'. Please don't leave me, don't you go.
1回目は2番のサビから、そして2回目は3番のサビを補填しています。 ちなみのこのDAC盤の編集はこれだけにとどまらず、サビに入ってくるハウリングを徹底的に嫌って、2番のサビの2回目にあたる部分までも1番のサビ同様に3番のサビの同部分を補填して、この曲のサビにハウリングが一切被っていなかったかのような編集としています。
本作はDAC盤以外のタイトルと同じ編集、即ち最初のサビでハウリングが2回聞こえるものとなっています。
続いては事典でも触れた、このビデオ音声の3つの難点部分が本作はどういう編集をしているかについて。
まずは"Hot Stuff"。 ビデオ音声では、間奏終了後に8秒ほど間奏の一部が上書きされているという難点があり、既発は曲をリヨン公演のサウンドボード音源に差し替えるか、間奏終了後の上書き含む部分をカットして曲を短縮版としていましたが、本作は3分2秒から3分11秒まで、Tarantura『Live 666』で聞けたオーディエンス音源を補填して、サウンドボード収録ブートとしてはこの曲をノーカットで通して聞ける唯一のタイトルとしています。
この公演のオーディエンス音源は他のパリ公演同様に演奏を大きく捉えたものにつき、音源切り替わり部分についても、後述するメインの音質調整効果もあって音質が若干変わったな程度になっていることから、違和感をさほど覚えずに聞くことが出来ます。
2つめは"Star Star"。 ビデオ音声では、3コーラス目のサビの途中以降から曲が終わる直前までの部分が欠落していましたが、テレビで放送されたこの曲が幸いなことにこの日からの採用だったことから、本作も事典の代表盤2つと同じくテレビ放送を曲頭から補填しています。
そして3つめ"Street Fighting Man"。 ビデオ音声はラスト数十秒程が欠落しており、幾つかのタイトルはフェードアウト処理としていましたが、これも"Star Star"同様にテレビ放送に採用されていたことから、VGP『French Made 1976』とGodfather『Les Loups Dans L'Abattoir The Complete 1976 Paris Tapes』は欠落部分からテレビ音声を補填。
DACの『French Made』はというと、事典ではこちらもテレビ音声に差し替えとしていましたが、実は基となったビデオ音声のまま"Street Fighting Man"がちゃんと完走していたということが判明。
その判明ポイントですが、テレビ放送では"Street Fighting Man"終了直後すぐにオフィシャルの"Satisfaction"が流れることから、終了後のチャーリーのドラムロールとミックの終演の挨拶を聞くことが出来ない番組の造りとなっていました。
したがってテレビ音声を補填していたVGP『French Made 1976』は、曲終了後すぐに音声をフェードアウトで絞っており、当然ながら終了後を聞くことが出来ず。
Godfather『Les Loups Dans L'Abattoir The Complete 1976 Paris Tapes』はというと、テレビ音声に切り替えた後、曲終了時のバンド全体でドカドカ演っている部分からテレビ音声にオーディエンス音声をクロスフェードさせて、曲終了後はおろかその後の客出しSE"La Marseillaise"までも聞くことが出来るようにしています。
ではDAC盤はというと、"Street Fighting Man"終了直後のDAC盤で聞けるドラムロールと、Godfather盤やTarantura盤で聞けるドラムロールを聞き比べると、被っている歓声が異なっていることに加え、DAC盤の歓声は他の曲が終わった後の歓声に近い感じのものであること、そして終了後の歓声部分にまでビデオ特有のハムノイズが確認できることから、DAC盤が基にしたビデオ音源は曲が完走しているものであったという結論に至っています。
本作の"Street Fighting Man"は、欠落部からテレビ音声補填するのではなく、曲の頭から曲全体をテレビ音声に差し替えており、曲の終了直後付近からオーディエンス音源をクロスフェード。そして同封のDVDの尺に合わせるために歓声を切り詰めて、客出しSE"La Marseillaise"が早く始まる編集となっています。
加えて本作は、ビデオ音声の"Brown Sugar"がイントロ途中で一旦フェードアウト気味になり、やたらビリーのクラビネットがオンにミックスされているのを嫌って、"Brown Sugar"と続く"Jumping Jack Flash"もテレビ音声に差し替え。したがって終盤の3曲は全てテレビ音声となっています。
さて本作の音質の方ですが、DAC『French Made』やSpeedball『Les Abattoirs Paris 76』のような鮮度の高いクリアーな音と異なり、高域控えめで中低域に厚みを加えた、ややモコっとした質感の音。ただこの音質が幸いして、テレビ音声やオーディエンス音源に切り替わっても、ほとんど違和感を覚えずにライブ全体を通して聴けるようになっています。まあ耳につく周波数帯に注意しながら、もう少しクリアーにしても良かったような気はしますが、これはこれで聞きやすい音。
惜しむらくは、モノラルの平坦さを解消すべく全体的に擬似ステレオエフェクトをかけたまでは、後発としては良いアイデアな気もしますが、残念なことに定位が全体的に左に寄ってしまっているので、ここはきちんと中央に定位を調整してもらいたかったところ。
ディスク2の残り10トラック9曲は、他のパリ3公演からの音源。
6月4日の"Angie"はDAC『From Paris To Toronto』(DAC-127)に代表されるオーディエンス音源。この日の"Angie"はテレビ放送されているのに、何故オーディエンス音源を選択したのかは意図不明。これも中低域に厚みを加えています。
6月5日の"Introduction""Honky Tonk Women""Ain't Too Proud To Beg"も、VGP『Les Rolling Stones Aux Abattoirs』(VGP-241)を代表としたオーディエンス音源で、VGP盤より若干マイルドな印象。
そして6月7日からの"Fool To Cry"はオーディエンス音源。代表盤であるDACの『Europe 76』(DAC-087)よりも音の線が細い印象の音造りですが、そもそもこの曲はステレオサウンドボード音源があるのに、何故にオーディエンスなのかは意図不明。
"Hot Stuff""Tumbling Dice""Outa Space""Midnight Rambler""Cherry Oh Baby"はステレオサウンドボード音源で、こちらもDAC『Europe 76』(DAC-087)でまとめられていますが、"Hot Stuff""Tumbling Dice""Outa Space""Midnight Rambler"はDAC盤よりモコっとした印象。"Cherry Oh Baby"は逆に僅かながらシャープな印象の音造りとなっています。
DVDについても触れておくと、6月6日のワーキングビデオを収録しているプレスDVDで把握できているのは、WOWの『Aux Abbatoirs Live in Paris 1976』(WOW-009 1/2)とSODDの『Paris Complete 1976』(SODD-122)の2タイトル。
発色度合いは本作含め3タイトルともほぼ同等。画質は本作が僅かながら鮮明な気もしますが大差なし。ちなみにSODD盤と本作は黒枠付。
本作の映像は全てがワーキング映像ではなく、欠落のある"Star Star"と"Street Fighting Man"はもちろんのこと、"Honky Tonk Women""Hand Of Fate""Star Star""You Gotta Move""You Can't Always Get What You Want""Happy""It's Only Rock'n Roll""Brown Sugar""Jumping Jack Flash"の11曲と"Band Introductions"をテレビ番組「Aux Abattoirs」で放送されたものに差し替えています。
ちなみに事典では、この日の"If You Can't Rock Me〜Get Off Of My Cloud""Hey Negrita"もテレビ放送されたことになっていますが、これは誤りでこの曲の放送は他日分でもありませんので、ここで訂正しておきます。
ということで、本作は純然たる6月6日公演のワーキング映像収録DVDではなく、6月6日公演でのベストな選択をしたタイトルということになります。
また他の曲でも色々と既発2タイトルとは異なる点がありますが、まずはCDのところで触れた"Ain't To Proud To Beg"の最初のサビ部分、本作含めた3タイトル全てのその部分はテープが伸びてしまって映像が乱れてしまってますが、そうならない映像もビデオ時代にあったりしましたので、ハウリング部分をわざわざ増やした謎の編集はこれが原因ではないようです。本作は音声を差し替えていることから、映像自体は乱れているものの音声は問題なく聞けるようになっていますが、WOW盤とSODD盤は音声差し替え等を行っていないため、この部分は音声も乱れてしまっています。
間奏終了後に8秒ほど間奏の一部が上書きされていた"Hot Stuff"。 音声はそうなってしまっていますが、映像自体は普通に進行しているため、本作はCD同様にオーディエンス音声を補填して尺を合わせた音声に差し替えて、これまでのこの映像の欠点を克服しています。既発2タイトルについては、当然ながらそのままにつき間奏後の映像と音声は一致せず。加えて間奏前のサビについても、既発2タイトルはビデオテープの伸びによって映像・音声ともに乱れていますが、本作は音声を差し替えた上で映像も微妙に調整が施していることから、曲の頭から終わりまできちんとシンクロしている唯一のタイトルということになります。
間奏後のサビ後から曲の最後まで欠落していた"Star Star"については、WOW盤とSODD盤は欠落したままにつき、曲が短くなってしまっているのはもちろんのこと、この曲後半の見せ場である風船シーンもまったく見れなくなってしまってます。本作は前述したようにテレビ放送に差し替えてあるので、この曲はノーカット収録。
同じく曲の終盤が欠落していた"Street Fighting Man"。WOW盤とSODD盤は欠落部からテレビ放送を繋いでいますが、編集がやや雑で、音声がいかにも繋ぎましたとなっているのが玉にキズ。本作はこちらも頭からテレビ放送になっているので問題なし。
また、テレビ放送では"Street Fighting Man"終了直後、オフィシャルの"Satisfaction"スタジオテイクが流れますが、本作はその部分をオーディエンス音声に差し替えているのはもちろん、映像の終わりに間に合わせる形に歓声を詰めて、客出しSE"La Marseillaise"が鳴るよう編集されています。
なお、本作DVD冒頭の"Documentary"ですが、これはナレーションやコメントといったものははなく、ただメンバーの会場入りシーンやバックステージの模様を捉えているだけの素材映像で、WOW盤の"Arrivals And Backstages"とクレジットされているもの同じです。 |
by Hara ¦ 20:09, Saturday, Jan 10, 2015 ¦ 固定リンク
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