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番外編『Sticky Fingers』Super Deluxe Edition |
『Sticky Fingers』Super Deluxe Edition
(Disc-2) Bonus Disc 1.Brown Sugar(with Eric Clapton)/2.Wild Horses(Acoustick)/3.Can't You Hear Me Knocking(Alternate Version)/4.Bitch(Extended Version)/5.Dead Flowers(Alternate Version)/6.Live With Me(Live At The Roundhouse.1971)/7.Stray Cat Blues(Live At The Roundhouse.1971)/8.Love In Vain(Live At The Roundhouse.1971)/9.Midnight Rambler(Live At The Roundhouse.1971)/10.Honky Tonk Women(Live At The Roundhouse.1971)
(Disc-3) Get Yer Leeds Lungs Out 1.Junping Jack Flash/2.Live With Me/3.Dead Flowers/4.Stray Cat Blues/5.Love In Vain/6.Midnight Rambler/7.Bitch/8.Honky Tonk Women/9.Satisfaction/10.Little Queenie/11.Brown Sugar/12.Street Fighting Man/13.Let It Rock
(Disc-4) Live At The Marquee Club,1971 ※DVD 1.Midnight Rambler/2.Bitch
『Sticky Fingers』Super Deluxe Editionのディスク2以降についての雑感等を少々。
まずはCD2のボーナスディスク。 トラック1の"Brown Sugar"は、古くからブートでお馴染みのクラプトン入りテイク。
比較的新しめな収録盤であるDAC『Sympathy For Slowhand』(DAC-075)と比べてみると。
Super Deluxe Editionの方はブートと定位が変えられており、キースのサイドギターやボビー・キーズのサックス、そしてアル・クーパーのピアノが右に定位しているのはそのままですが、クラプトンが弾いていると思しきスライドギターはブートがほぼ中央だったのに対し、Super Deluxe Editionは左にミックスされていることから、これまで全体的に右寄りに感じられたこのテイクの左右バランスが良くなっています。
逆に間奏のみに現れるテイラーのリードギターはブートだと左でしたが、Super Deluxe Editionは中央にミックス。また、曲後半のミックのアドリブヴォーカルがブートよりオンにミックスされていることに加え、曲が終わった後にはブートで聞けなかったミックの語りがほんの少し聞けるようにもなっています。
ということでこのテイクについては、ブートも別ミックスとしてまだ価値が残ったのかなと。
トラック2は"Wild Horses"。 映画『Gimme Shelter』にて抜粋披露されていたものや『Hot Rocks』の初回版に誤って収録されていたものと同テイク。
『Hot Rocks』では、イントロ部はストロークで歌いだしからハーモニクスを弾いているギターが中央やや左に定位してますが、Super Deluxe Editionは左に寄せられ、ステレオ感を出すためコーラス系のリバーヴがかけられています。また歌い始めからバッキングのコードを受け持つギターについては『Hot Rocks』は中央やや右寄りなのに対し、Super Deluxe Editionは右にミックス。そしてこの右側のギター、『Hot Rocks』ではイントロの最初から聞こえますが、Super Deluxe Editionの方は最初オフになっており歌い出し寸前(16秒)からオンになっています。
「Graceless lady」のヴァースから入ってくるピアノが中央にミックスされているのは『Hot Rocks』もSuper Deluxe Editionも同じですが、『Hot Rocks』の方がかなりオンにミックスされており、最初のサビ以降はかなり目立って聞こえ、中央やや右寄りのギターがかき消されてしまっている箇所が多いため、Super Deluxe Editionとは異なる印象を受けることも。
映画『Gimme Shelter』の方は、Super Deluxe Edition同様にギターがきちんと左右に分離したミックスとなっていますが、ピアノが右にミックスされているということで、このテイクは3種のミックスが存在するということとなります。
ブートでは『Time Trip 1969-1973 Vol.2』(R.S-TR-12)やDACの『Time Trip 1966-1974』(DAC-063)で聞けたものと同テイク。
左右のギターの振り分けや中央のピアノ等、定位はほぼ同じですがリバーブが異なるため、ブート方がややこじんまりとした印象。このブートで聞けるミックスも右からのギターはイントロ初めから聴くことが出来ます。
曲が終わった後のチャットは『Hot Rocks』やブートでは未収録につき、Super Deluxe Editionのみで聞くことが出来ます。
なお、Super Deluxe Editionの4分18秒に発生している音ブレはマスターに起因するもののようで、『Time Trip 1969-1973 Vol.2』や『Time Trip 1966-1974』でも同様の音ブレが確認できますが『Hot Rocks』の方にはありませんので、マスターの経年劣化によるものなのかと推測されます。
余談となりますが、『Hot Rocks』のこのモノラルに近いミックスもYellow Dogの『The Black Box』4枚組バージョン(YD-046-048,2000)や、最近ではWLRの『Rarities Deluxe - Collectors Edition』(WLR-2198)といった幾つかのブートにアナログ落としで収録されていますが、VGPの『Bright Lights Big City』(VGP-307)は何故かモノラルで収録されているので要注意。
トラック3の"Can't You Hear Me Knocking"は、アウトテイク自体がブートでもリリースされていなかった曲。
イントロのリフがようやく出来つつあるといった状態で、歌詞が未完成なのはもちろん、曲の構成もまだあやふやな初期テイク。後半のインプロビゼーションは当然のことながら無く、それ以前に演奏終了。Super Deluxe Editionは、この後のラウンドハウス収録曲からも推測されるように、1枚のディスク内に同じ楽曲が重複するのを避けるというコンセプトのようなので、もう少し進んだテイクが併せて収録されなかったのはちょっと残念。とはいえ、このテイク自体が聞けるようになったこと自体が大変画期的ではあるのですが・・・。
トラック4の"Bitch"も、ブートで聞くことの出来たものはミックス違い程度のものでアウトテイクとはいえないものしかありませんでしたが、今回のSuper Deluxe Edition収録テイクは、歌詞が未完成どころではなく演奏自体がアルバム採用テイクとは異なるもの。フェードアウトすることなく、ほぼ演奏が止まる最後の部分まで聞くことが出来るため、曲終盤の各人のフリーなアドリブを聞くことが出来ます。
"Dead Flowers"はAlternate Versionとサブタイトルが付いており、アウトテイク扱いとなっていますが、アレンジ自体は70年8月30日からスタートし10月9日まで続いたヨーロピアンツアーと同じもの。
NicoのHPでは、このテイクもアルバム収録の正規テイクと同じ69年12月9,10,18日のオリンピックスタジオでのレコーディングとなっており、この別テイクの方が初期テイクとされていますが、もしそうだとしたら何故に翌年のツアーで今回の別テイクのアレンジ、所謂ボツとしたアレンジが復活したのかが謎となりますが、どう聞いてもこの3日間でここまで雰囲気を変えるとは考え難い気も・・・。
ちなみに70年ツアーでの演奏を比べたところ、残念ながらまったく同じ演奏はありませんでしたが(未ブート化の9月9日と11日、12日の昼夜どちらかのショー、29日、そして10月3日は確認出来ず)、テンポやニュアンスはツアー初期の頃に近いものがあったので、ツアー開始前8月27日と28日にロンドンのLyceum Theatreで行われた リハーサルの可能性が高い気がしますが、はたして真相はいかに。
他のこの曲のアウトテイクとしては、アルバムテイク同様のアレンジのテイクが過去にブート化されており、 前述の『Time Trip 1969-1973 Vol.2』(R.S-TR-12)やDACの『Time Trip 1966-1974』(DAC-063)にも収録されています。こちらのアウトテイク、ベーシックトラック自体はアルバムと同じなものの、スライドギターとヴォーカルが異なっており、間奏後のサビ「Take me down little Susie」のlittle Susieをlittle Lucyと歌っているテイク。また楽器の配置もオフィシャルでは左に定位しているピアノが、このアウトテイクでは右に配置されている等、異なる点があります。ちなみに『Time Trip 1969-1973 Vol.2』の方は左右のチャンネルが逆。
トラック6以降の5曲は71年3月14日に行われたラウンドハウス音源から。 『Sticky Fingers』の拡大版なのに、その『Sticky Fingers』収録曲のライブテイクが外されたのは、前述したように1枚のディスク内に同じ楽曲が重複するのを避けるというコンセプトがあったからなのかなと。
このラウンドハウス公演については昼夜2公演行われており、2ndショーの方はTMOQ『"London Roundhouse"』を含めた幾つかのタイトルで、オーディエンス音源がブート化されてきましたが、そのオーディエンス音源と今回のオフィシャルリリース音源を確認したところ、"Live With Me"と"Stray Cat Blues"はオーディエンス音源と異なる演奏だったことから1stショーからとなり、"Love In Vain""Midnight Rambler""Honky Tonk Women"の3曲がオーディエンス音源と一致したので、2ndショーからとなります。
したがって、ラウンドハウス公演については昼夜2回のショーともサウンドボード音源が残されていることが判明。
ここに収録されている演奏はいずれも、Super Deluxe Editionディスク3のリーズ公演よりも(散々聞いてきたリーズでの演奏と比べて新鮮であるという贔屓目もあるのでしょうけど)激しい印象を受ける演奏につき、いつの日か両方のショーともオフィシャルリリースしてもらいたいものです。
ちなみに2ndショーのオーディエンス音源の現行ベストはDACの『Get Your Leeds Lungs Out』(DAC-069)。
ディスク3は、ブートレグの定番音源である71年3月13日リーズ大学公演からこの日の演奏曲を全曲収録。
副題はブートレグでおなじみのタイトル「Get Your Leeds Lungs Out」と思いきや、微妙に変えた「Get Yer Leeds Lungs Out」。From The Vaultシリーズがオフィシャルブートレグとして、有名ブートレグのタイトルを使用していることから、シリーズとは別の本作はタイトルをそのまま使わず微妙に変えたのかなと。
ブートの方はBBCでの放送を基にしており、LP時代の代表盤だったRoyal Soundの『Get Your Leeds Lungs Out』(RS-001)をジャケットごと復刻した、DACの『Get Your Leeds Lungs Out』(DAC-089)を事典ではBBC音源収録タイトルの代表盤として挙げて来ましたが、このBBCでの放送は残念ながら冒頭2曲がカットされていたことから、これまで"Dead Flowers"から"Let It Rock"までの11曲しか聞くことが出来なかったことに加えて、オフィシャルリリースされた"Let it Rock"以外はモノラルといった状況。
今回は放送されなかったオープニングの2曲"Junping Jack Flash"と"Live With Me"も晴れて収録され、この公演の全曲をステレオで聞くことが出来るようになったのでした。
今回、"Midnight Rambler"の前奏部もこれまでブートで聞けたものより長く収録。ただし、このSuper Deluxe Editionで聞けるようになった前奏部ですが、おそらくリール交換後の録音スタートが間に合わなかったようで、最初はテープが伸びたような音になっています(本作のタイムでいうとトラック6の0秒)。このテープが伸びたような箇所は"Satisfaction"終了後、本作のタイムでいうとトラック9の5分23秒にもありますが、ブートレグすなわちBBCでの放送ではこれらの箇所をカットして放送していたことが分かります。
また、トラック分けやクレジットこそされてませんが、"Honky Tonk Women"前のサポートメンバー紹介もカットされずに収録されており、前述のブートタイトル「Get Your Leeds Lungs Out」はこのメンバー紹介後にミックがつぶやいた言葉。当然ながらこのつぶやきこのSuper Deluxe Editionにきちんと収録されています。
ここで今回のリリースで気になるのが、今回登場した冒頭2曲が本当にリーズなのか?ひょっとしてラウンドハウスなのではないか?という疑問。これについては、Super Deluxe Editionディスク2収録のラウンドハウス1stショーからの"Live With Me"、そしてブートで聞けるオーディエンス音源の2ndショー"Live With Me"、いずれの演奏とも異なることや、曲間の歓声も他のリーズ公演の曲間と似たようなもののため、ほぼリーズ公演で間違いないかと。
"Jumping Jack Flash"についてもラウンドハウスの1stショーは確認出来ませんが、2ndショーのオーディエンス音源とは演奏が異なっています。
ただNicoのHPには、3月12日のエンパイアシアター公演もサウンドボード収録されたとの記載があったりもするので、ここからの可能性もゼロとはいえませんが・・・。
なお、ラストの"Let It Rock"だけはステレオミックスでオフィシャルリリースされていましたが、今回のSuper Deluxe Editionとはミックスが異なっています。
まず何故か歓声が逆になっており、イントロがはじまる寸前の「Paint It Black!」と聞こえる観客の掛け声が、従来は左なのに対し、Super Deluxe Editionは右。 キーボードは、従来が左でSuper Deluxe Editionはほぼ中央。 ブラス隊は、従来が中央やや左なのに対して、Super Deluxe Editionは左。 ドラムについては、従来はシンバル類が中央やや右になっていたのが、Super Deluxe Editionは中央となっています。
また全体的な音も、従来は中域がオンになっていたのに対し、Super Deluxe Editionは音の重心がやや下になり、奥行きが若干増していることに加え、一連のOfficial Bootlegシリーズ同様にスネアドラムが胴鳴りを強調した太いものに。
ちなみにブートではカットの有無があった"Street Fighting Man"終了時のハウリング。オフィシャル化にあたってうまく消してあるのかと思いきや、Super Deluxe Editionの方もそのまま残してあったりします。
といったわけで、今回のリリースによりこのリーズ公演のブートの存在意義といえば、BBCで放送されたオリジナルモノラルミックスを収録しているといった点のみとなり、この公演に限っていえばほとんどその役目を終了した感が濃厚かなと。
ディスク4は「Live At The Marquee Club,1971」というサブタイトルのDVDで、テレビ放送された3月26日マーキー公演から抜粋された2曲を収録。
ほぼ同時期に発売されたFrom The Vaultシリーズの『The Marquee Club Live In 1971』と何らかの違いがあるのかと思いきや、カット割等まったく異なる部分の無い、ただの抜粋収録盤となってしまってます。
せめて"Midnight Rambler"が、92年の再放送企画時のエディットバージョンならそれなりの価値もあったんでしょうけど、この中途半端さは何とも残念。
最後に、このSuper Deluxe Editionに封入されているメンバーの切り抜き、ビルが多いようにネットでは見受けられますが、私のボックスも見事にビルでした・・・。
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by Hara ¦ 02:31, Monday, Jun 15, 2015 ¦ 固定リンク
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